コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

Lateral cutaneous nerve entrapment syndrome??

最近、Abdominal or Anterial Cutaneous Nerve Entrapment Syndrome (ACNES)が有名です。胸神経の前皮枝が絞扼されることによる腹痛が特徴的です。

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解剖学的には下記のようにAnterior cutanes branchesは並んでいます。

なので、上記のようなトリガーポイントが存在するわけですね。

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ところで、AnterialだけでなくLateral cutaneous branchesも認めます。

 

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肋骨の走行にほぼそった走行になります。

 

では、ここに絞扼:entrapmentが生じたらどうなるか??

 

 

pubmedでは、thoracic lateral cutaneous nerve entrapment syndromeで一応引っかかりますが、あまり論文は多くないです。

 

ただ、よく分かりませんがRCTもある?? 意外にメジャーな病気でしょうか。。

[Controlled clinical trials on the Pizhen and massage for the treatment of thoracic lateral cutaneous nerve entrapment syndrome]. - PubMed - NCBI

 

ただ、先日そうとしか思えない症例がありキシロカイン皮下注で痛みは消失。

医学は奥が深いです。

 

 

 

Community Hospital General Internal Medicine

かの有名な松村先生の記事を見つけました。

http://www5f.biglobe.ne.jp/~osame/omoukoto/224wa-sono-4-jiai-kennshuu-bennkyoukai/224wa-sono-4-tsuiki.htm

 

そこの下記のような記載を見つけました。

地方都市の小さな病院なので、限界も多い。専門的掘り下げも不十分だし、興味ある症例にも事欠く。だが、ありふれた病気への暴露は、昼夜を問わず豊富だ。問診と理学的診察と簡便な検査を重視し、迅速な診断と治療の開始を心がける。若い医師たちは、肉体の酷使を要求され、ひとを配慮することを習慣づけさせられる。入・退院や検査の適応を厳しく吟味し、医療の費用や効率に対する感覚を身につけさせる。蚊をやっつけるのに大砲、像を打つのに吹き矢といったアンバランスを除き、我流に流れない医療を目指す。時には治療しない勇気もいることをわかりあう。これらはいずれもベッドサイドで執拗に点検、確認するので、主治医の思いつきの乱発や臭いものにフタの風潮は許されない。ガラス張りのチーム医療の下では、知識・技術だけでなくベッドサイドマナーの多くも、世代間の伝達事項となりうる。ハイカラにいえば、 Community Hospital General Internal Medicine となる。ちなみに、知識の情報源は原則として英語とし、教科書は少なく、雑誌を多くする。

 

地方都市の小さな病院なので、限界も多い。専門的掘り下げも不十分だし、興味ある症例にも事欠く。だが、ありふれた病気への暴露は、昼夜を問わず豊富だ。

→ここはまさに東京城東病院総合内科の現状のようでした。

 

ハイカラにいえば、 Community Hospital General Internal Medicine となる。

→Community Hospital General Internal Medicine。。いい言葉ですね。。当院の総合内科が目指す方向性もこれに近いのかもしれません。

城東病院総合内科フェロー募集

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〇はじめに
京城東病院総合内科では2014年に立ち上げて以降、3年目~5年目の内科後期研修医を多数受け入れてきました。
今回、卒後6年目以降のフェローを募集することとしました。

対象:卒後6年目以上の医師

募集人数:若干名

研修期間:原則2年間(要相談)

研修内容:原則、東京城東病院総合内科での研修を基本としますが、院外研修も可能です。詳細は来院時にご相談させていただきます。

〇研修概要
・総合内科研修を病棟・外来・救急で改めて行う。
・いずれはチームリーダーとして病棟指導、および外来指導を行う。

・執筆活動や学会活動などの院外活動を積極的に行う。
・小規模病院および地域の病院での総合診療・総合内科のロールモデルを作り上げる。

〇病棟
・チームで屋根瓦式の病棟総合内科体制を行っています。

・全ての分野の内科疾患を診療することが可能です。

・毎日朝のチーム回診、夕方の振り返りとフィードバックが充実しています。

・数は少ないですが、集中治療を要する患者も経験することが出来ます。

・経験や実績に応じてチームリーダーとして教育および指導に専念も出来ます。

〇救急
・全ての内科系救急に関しては総合内科がファーストタッチで初療にあたります。

・救急で入院が必要になればそのまま受け持つことが可能です。

・救急から入院まで一連の流れで見ることで経験値が深まります。


〇外来
・午前中の全ての初診外来を総合内科が担当しています。

・スタッフのフィードバックが必ず入るため、臨床推論の訓練の場として最適です。
・継続外来を重視しているのも当科の特徴です。

EBMや家庭医療の視点を交えて継続外来を行っています。

・必要に応じて継続外来のフィードバックも行います。

〇魅力的なカンファレンスや教育回診
・教育カンファレンスを頻繁に行っています。

・院内カンファレンスは以下のとおりです。
月:放射線シェアカンファ
火:コアレクチャー
水:ジャーナルクラブ
木:マニュアルカンファレンス
金:臨床推論カンファレンス

・著名な院外講師の招聘を多数行っています。
青木眞先生、徳田安春先生、山中克郎先生、志水太郎先生、上田剛士先生、坂本壮先生など
感染症に関しては根本 隆章先生、膠原病に関しては陶山 恭博先生と一流の専門医を招いてカンファレンスを定期的に行っています。
・代表的な電子教科書であるUp to DateとDynamedを無料で使用出来ます。


〇商業誌執筆機会の確保
・商業誌執筆の機会が比較的豊富なのも当科の特徴です。

・幅広い出版社との繋がりがあります。

・都内であるので出版社とのコンタクトが非常に容易です。

〇当院に向いている先生
・全ての内科疾患を同時に病棟で診療を行いたい。
・病棟だけでなく、救急と外来も同時に診療を行いたい。
・フロンティア精神があり新しいことをやっていきたい。
・病院での家庭医療を実践に興味がある。

 

〇最後に
何はともあれ、一度見学をしていただければと考えています。
見学だけでも大丈夫ですので、気軽においでください。

見学希望の方は jotosec@gmail.com まで【見学希望】と題名に書いて、名前、
所属、医師年数、経歴を銘記してメールをしていただければ幸いです。

奇脈について

少し話題になったので。。

チーフが以前、個人ブログにまとめた記事を再掲します。

 

 

通常吸気には胸腔内は陰圧になり、右室への静脈還流量が増加する。
その結果右室が拡張し、左室を圧排し、心拍出量が低下する。
つまり吸気時にのみ血圧が低下する。
健常群では6±3mmHg程度。これが10mmHg以上低下する場合奇脈という。
 
 
奇脈は基本的に 心タンポナーデで認めるが、喘息とCOPDでも認める。
要は、水(心タンポナーデ)か空気(喘息・COPD)で心臓が、全周性に押されてる病態で起こると考える。
なおARがあると奇脈が聞こえなくなる⇒A型大動脈解離では奇脈は稀。
さらに収縮性心膜炎ではKussmaul徴候を認めるが、奇脈は稀(逆に心タンポナーデではKussmaul徴候が稀)
*Kussmaul徴候 吸気時に通常、頸静脈は虚脱するが、逆に吸気時に頸静脈が怒張する現象のこと。
 
 
●具体的な測り方。
健常者でも激しく呼吸すると奇脈が起こってしまうので、静かに規則正しく呼吸してもらい測定する。
①血圧計を用い、血圧計を上げていく。
②血圧を徐々に下げていくと最初にKorotkoff音が聞こえる。ここでは呼気でしかKorotkoff音が聞こえない(呼吸を意識しなくても、音がマダラにしか聞こえないので、それで分かるはず)
③さらに血圧を下げていくと呼気でも吸気でもKortkoff音が聞こえるようになる。
 
②と③の血圧の差が10mmHg以上であれば奇脈とする。
 
 
上記を触診で代用する場合は感度が落ちるので、15-20mmHg以上の奇脈に限られる
 
 
なお上記の所見はパルスオキシメーターで代用可能かもしれない Arch Pediatr Adolesc Med. 2004 Jan;158(1):48-51.
①血圧計を用い、血圧計を上げていく。
②血圧を徐々に下げていくと最初にパルスオキシメーターが検出される。ここでは呼気でしかパルスオキシメーターが検出されない。
③さらに血圧を下げていくと呼気でも吸気でもパルスオキシメーターが検出される。
パルスオキシメーターは聴診よりも簡便なので、使えるかもしれない。
 
 
他には、パルスオキシメータの波形の最大/最少比>1.5であれば血行動態に影響を与える心タンポナーデという報告もある。
Clin Cardiol. 2006 Sep;29(9):411-4.
 
 
 
最近は水銀柱の血圧計は本当に少ないが、自動血圧計でも手動であれば代用できるかもしれない。
 
 
 
心タンポナーデにおける診断能
奇脈が陽性(10mmHg以上低下)の場合、心タンポナーデの診断はLR+1.4  LR-0.7とされている。Br Heart J. 1995 Apr;73(4):351-4.
 
他の報告では12mmHgをカットオフとして、心タンポナーデの診断に非常に有用という報告もある(特異度83%,感度98%  LR+5.9 LR-0.03)⇒Am Heart J. 1988 Feb;115(2):391-8.
 
上記2つの報告はいずれも心嚢穿刺による臨床症状改善をアウトカムにしている。


 
●喘息における診断能
マクギーによると重度の喘息の予測において・・
奇脈(10mmHg>) :LR+2.7 , LR- 0.5
奇脈(20mmHG>):LR+8.2 , LR- 0.8
とあれば確実に重症といえる。
 
ただし、重症の喘息であれば呼吸数や呼吸努力に奇脈が依存するので感度が低くなる。
 
 
 
なおベイツによるとCOPDでも奇脈が有用と言われている。
徳田先生のブログによると、COPD気道の閉塞が強い場合には、奇脈をきたし、奇脈のサイズと気道閉塞の程度とは相関がある、と記載がある。
http://blog.goo.ne.jp/yasuharutokuda/e/c076c647bcc0f1e8da1156ccc8ab9d2b
基本的に重度の喘息の診断と同様なのだろう。

若林先生 ご講演

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本日は横浜市立大学附属市民総合医療センターの リハビリテーション科診療講師である若林秀隆にお越しいただき講演をしていただきました。

大変勉強になる講演で、職員の意識改革に間違いなく繋がったと思います。

若林先生のご講演のエッセンスが下記にまとめられていますので、ご参照ください。

 

医学書院/週刊医学界新聞(第3216号 2017年03月20日)